中小企業の建設業界 経理実務の具体的な仕事内容とは? ~転職者や経理初心者がイメージできるように解説します~

私は9年間(そのうち7年間、経理に従事)、中小建設業者である会社に勤めてきました。

簿記2級の知識はありましたが、実務的には右も左も分からない新入社員時代から経理課長になって欲しいと声を掛けられるまで、特別管理職としてのマネジメント経験を含め、一通りの業務は経験することとなりました。
その内容は、請求書の入力・振分作業のような一番雑務的な業務から、予算管理や損益予測といった内部管理的な部分、決算・税務に至るまで多岐に渡りました。
(中でも決算・税務については、税理士試験を通じた知識を強く活かすことができました。)

経理を目指している方でも、まだ経験がなければ「実際に経理の仕事って何してるの?」という疑問が残っている方もいるハズ。
ここでは、実体験に基づき、建設業の経理の仕事について、大まかなイメージを伝えたいと思いますので、ぜひご参考にして下さい!

建設業界の経理の主な仕事内容は

建設業の経理の仕事ですが、基本的な流れ自体は、他の業界と同じ。

日常業務から月次決算までの流れ

日常的に仕訳を作成し、その仕訳データの蓄積によって、最終的に事業年度の経営成績・財政状態が作られるのです。

仕訳作成~入力

材料費が確定しました!
材料費20万円 / 買掛金20万円
工事が完成しました!
売掛金100万円 / 売上100万円

日々こういった仕訳が入力されていき…

月次決算

その集計されたデータから月次の損益が確定します。

売上累計 100
売上原価累計 80
→売上総利益 20

こういった数値を報告します!

建設業特有のポイントは?

ここで、建設業界特有のポイントは、商売の内容が工事である、ということ。

上記は、建設業の受注から入金までの流れです。
これを見ると、商品の売買とは全然違うことが分かりますよね?

そのため、「業務の基本的な流れは同じ」でも、実際の業務については結構違ってきます。
どのように違うのかは、下記で見ていきましょう。

なお、社内経理の仕事は、仕訳を作ることだけではありません。
売上予測や資金繰り予測の資料を作成したり、ネットバンキングで支払業務をしたりと、いろいろな業務があります。
ここでは、一番基礎的な流れを説明させていただきますので、細かい話は割愛させていただきます。

具体的な業務

≪工事を受注したとき≫

まず、営業担当などが工事を受注した段階で、その受注した情報が受注伝票などで経理へ報告します。

請負金額 1,000万円 着工5月10日 竣工9月8日

(営業担当が「良い工事を受注したよ!」と契約書を持ってきてくれるかもしれませんし、受注伝票データがそっけなくシステムで通知されるだけかもしれません。)

なお、この受注した段階では仕訳は発生しません。
経理担当はこの情報から、売上予測や資金繰り予測の資料などを更新していくこととなります。

≪工事が実際に始まると…≫

工事を受注をしたら、その後、実際に作業が始まってきます。
そうしたら、その工事の費用が発生してくることになります。

その流れはこんな感じ。

工事現場では、その現場ごとに担当者がいます。
例えば現場Aの責任者田中さん。
現金で駐車場代を払ったり、掛けで材料を仕入れたりします。
そして、その費用のデータをまとめます。
(場合によっては、この作業から経理担当者が行うこととなるかもしれません。)

そのデータを経理に提出し、仕訳をチェック、そのチェックが完了したら、データを入力していきます。
そのチェックの際に、現場の担当者とやり取りをします。
「この○○というものはどういったものですか?」などと確認をします。
正しい科目に修正したり、税務上正しく処理するためです。

これが費用処理の一連の流れです。

≪工事が完成したら≫

工事が完成したら、経理担当はその報告を受けることとなります。
営業担当から売上伝票データをもらうなどです。
売上が確定したら、下記の処理が必要となります。
・請求書の発行
・仕訳を入力
・売上予測・資金繰り予測などの更新

これが基本的な一連の流れです。
なお、この一連の流れによって、工事ごとの費用・収益が集計されることとなります。

その他、経理では以下のような日常業務があります。

・入金確認など
売上がちゃんと期日通り入金されているかチェックします。
・資金繰り表の作成
損益の流れと資金の流れは異なるため、資金繰り表を作成します。
・源泉納付など
従業員から預かった所得税や住民税を納付します。

建設業界の決算の流れは

建設業の決算で、他の業界と大きく異なる点は、やはり工事の売上・原価について。
未払費用などの計上、減価償却費の計上etc.
といった作業は基本的には変わりません。
実際には下記のようなイメージ。

決算のイメージ

決算月が3月の場合です。

1~3月

大体、決算の予測が固まってくるので、損益などの最終調整に入ります。
利益が過大であるなら、従業員に決算賞与を出して法人税などを減らそうですとか、赤字になりそうなら黒字に近づけることができる資産を売却しようといった判断をします。

また、私が勤めていた会社では、3月までに終了した工事の仮払金については、必ず3月中に返してもらうようにしていました。

4~5月

4月に入っても、すぐには決算を終わらせることはできません。
3月分の資料が大まかに集まるのも、4月中旬以降。
その間に、確定した情報からどんどん仕訳を確定させていきます。

なお、申告期限の延長をしていない会社では、5月末までに法人税の申告をしなければなりません。
そのため、5月中には決算をまとめる必要があります。

建設業の場合

完成工事・未成工事を把握

まずは当期に完成する工事と、翌期以降に完成する工事を把握するところから始めます。
受注伝票などから、竣工日(工事が完成する日)を知ることができるので、基本的にはその情報でOK。

未成工事が確定したら、当期中に費用処置していた未成工事の原価があったら、未成工事支出金という資産勘定に振り替えます。
★なお、期中に未成工事支出金勘定を使用し、決算(月次も含む)において、完成した工事分を原価に振り替える方法もあります。

共通原価などの配賦

業界によっては馴染みがないかもしれませんが、配賦という作業が必要となります。
例えば、現場の従業員の給料など、その工事に何時間従事しているといった情報を集計し、各工事に振り分けたりする感じです。

月次で行っている場合もあるかと思います。

 

なお、資格試験などの知識が大きく役立つのは、この決算のときです。
決算では、日常業務とは違い、イレギュラーな仕事も多いです。
そのため、体系的な簿記や税法の知識を持った方が重宝されるのです。

ちなみに、決算をまとめることができる人材は限られていますので、経理の花形といえるでしょう!

建設業界の経理で役立つ資格

建設業界で「建設業経理士(経理事務士)」という資格が評価されます。
簡単に説明させていただきますと、

①経審の評価になる
②建設業独特の経理の知識が身に着く
→建設業界では高く評価される!
といったメリットがあります。

そのため、建設業界で経理をされるのであれば、ぜひ取得したい資格です!
特に、「出世したい!」と思っている方には必須の資格です。

私も会社から一定の評価をいただきましたが、資格による部分も大きいです。

建設業界での経理で活躍する人材の特徴は?

一つ挙げさせていただきますと、
「相手の目線に立って考えることができること」
これができる人は、建設業界の経理で活躍するでしょう。

「経理」に従事している方は、数字の入力ですとか、エクセルを駆使することに目が行きがち。
確かにそういった技術は仕事を早く終わらせるためには必要不可欠です。
しかし、社外の人と話す機会の少ない経理職こそ、「相手の目線に立って」話ができる能力が求められます。

上記でも紹介しましたが、経理であっても、現場の方と直接話す機会は多いですし、経営者の方に財務内容を伝えるような場面もあります。

建設業界の現場に従事する方は、豪快な方も多いです。
そのため、割合としては細かい数字に強くない方も多くいます。

そんな中、いかに相手の目線に立って、情報を交換できるか?という力が非常に強く求められて来るのです。

例えば、いきなり減価償却費と言われたって、馴染みがない人にとっては混乱するはず。
そういった専門用語を多用せず、誰にでも分かるように説明できるスキルが必要なのです。

建設業界の社風は

私の勤めた会社や、協力会社の雰囲気から見た印象ですが、全体的に、細かいルールやマナー・形式に厳しくないような、よく言えば「おおらか」という感じでした。

それと同時に、強い口調で厳しいことを言う方も多いです。
建設現場は、一瞬の判断ミスで事故が起きてしまうような厳しい環境。
そんな現場での作業をされている方は、強い口調で話すことが癖になっていたりします。
しかし、裏表はなく、お酒を飲めば一緒に盛り上がれるような、そんな性格の良い方が多かったです。

人によって合う合わないはあるかと思いますが、私にとっては堅苦しくない、そんな環境が気楽で良かったです。

建設業界のオススメのポイントは?

オススメのポイントは、上記のような社風。
仕事は細かい数字に向き合わなければいけないので、人との雑談は大雑把に楽しめるほうが気持ちが楽。

また、この業界の経理職については、転職がしやすいというメリットがあります。
建設業者は数が多く、小規模なところも多いので、比較的自由に転職ができます!

建設業界の優良企業の見分け方

私は、働く上で重要なことは、「優良かどうか」ということよりも、「自分にとって働きやすいかどうか」ということだと思います。
そしてそれは、自分の性格や、自分の求めている条件によって異なってきます。

という前提はありますが、「そう言っても実際問題、経営が安定したところに勤めたいよ!」というところですよね。

実際、建設業者には、財政が安定していないところも多いです。
そのため、なるべく安定したところに長く勤めたい、という希望があるのであれば、財務内容を調べる方法もあります。

財務内容を知る方法

一般的な業界では、上場企業でなければ財務情報を手に入れることは難しいことが多いです。
しかし、建設業界の場合は別。
「経審」を受けている建設業者であれば、小規模な業者であっても、一定の財務情報はすぐに入手可能です。

CIIC 一般財団法人 建設業情報管理センター

自分の気になる業者の財務情報を比較してみましょう!
また、何人建設業経理士の資格を持っている人がいるかといった情報も分かります。

(更に、建設業許可を受けている業者であれば、役所で財務諸表を閲覧することも可能です。
大臣許可か知事許可かによって、閲覧場所も違うので注意。)

まとめ

建設業界の経理職のイメージを掴むことができたでしょうか?
一言に建設業界といっても、工事の種類は数多くありますし、規模もまちまちです。

この記事で大まかなイメージを掴むことができたら、今度は実際に気になるところに訪問してみるのも良いですね!
少しでも皆様のご参考になれば幸いです。