消費税法の簡易課税制度とは ~高い節税効果の見込みあり!売上が5千万円以下なら要チェック~

簡易課税制度とは、支払うべき消費税から控除される仕入税額を簡単に計算する制度。
その適用の要件は、前々事業年度の売上(税抜)が5千万円以下であることなど。

この制度のポイントは、節税できる可能性がある!ということ。
不動産の貸付など、あまり費用が発生しない業種では高い確率で節税することができます!

簡易課税制度とは

消費税の計算に用いる、「仕入控除税額」を簡単に計算する制度です。

仕入控除税額とは

まず消費税の仕組みですが…

上記のように、消費者から預かった消費税をお店が国に納付するという仕組みです。

なお、消費税はあくまでも消費者が支払うもの。そのため…

上記の場合は、仕入先が国に消費税4円を支払います。
納めるべき消費税額は、売上から計算するので、仕入先は仕入先で4円の消費税を納めることになるのです。

なので、その分はお店が支払うべき消費税額から控除されることとなります。
そして、最終的には消費者が払った8円の消費税額が国に納付されることとなります

その仕入れ時に支払った、控除される金額を仕入に係る消費税額(仕入控除税額)といいます。

この記事では話を簡単にする為に…

①「消費税」の金額には、国税である消費税だけでなく、地方消費税の額を含むものとします(そのため、実際の計算方法などとは若干異なります)。
②仕入控除税額は、いわゆる商品などの「仕入れ」だけでなく、店舗の家賃や水道光熱費などの消費税も控除されますが、支払った費用は仕入代金のみとして、説明しています。
③コンビニ・スーパーの消費税率はすべて軽減税率として説明しています。

簡易課税制度の計算のイメージ

原則課税では、仕入控除税額を上記で紹介したように計算します。
つまり、基本的には、「実際に支払った消費税=仕入控除税額」となります。
上記の図で言うと4円控除される、というイメージです。

簡易課税制度は、仕入控除税額を「簡単に」計算します。
例えば小売業なら、アバウトに言えば仕入値などは大体売上の80%くらい。
そういった割合(みなし仕入率)を国が定め、その割合を用いて仕入税額を計算します。

簡易課税制度の計算方法は

もう少し具体的に計算方法を説明します。
まず、業種とみなし仕入率は下記のように定まっています。

(国税庁HP  簡易課税制度の事業区分より)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm

①コンビニのような小売業で、年間3,240万円(税込)の売上がある場合
≪売上によって預かった消費税額≫ 240万円
≪控除仕入税額≫ 240万円×80%=192万円 これが控除される!

②スーパーの売上が4,320万円(税込)、アパートの貸付で550万円(税込)の売上がある場合
≪売上によって預かった消費税額≫
小売業 320万円 不動産業 50万円

≪控除仕入税額≫
小売業 320万円×80%=256万円
不動産業 50万円×40%=20万円
256万円+20万円=276万円 これが控除される!

上記のように、2業種以上営んでいる場合は、それぞれの売上高にその業種ごとの割合を乗じて計算します。

なお、1事業の売上が75%以上である場合などは、その割合だけを用いれば良いなどの特例もあります。
より節税につながる可能性もありますので、実際に適用する際はチェックしましょう。

簡易課税制度が適用できる要件とは

簡易課税制度の適用を受けることができる要件は、基準期間における課税売上高(税抜)が5千万円以下であること。

基準期間とは、基本的には前々事業年度を言います。
個人の場合は、前々年。
そして、簡易課税制度の適用を受ける場合には、その適用を受けたい事業年度が開始する前に、届出書を提出する必要があります。

原則課税と簡易課税の取扱いの違い

原則課税と簡易課税では、仕入税額の計算方法が異なるため、下記のように取扱いも異なります。
①仕入時の課税区分の必要なし
②還付は発生しない

仕入時の課税区分の必要なし

原則課税を適用している場合は、費用を支払ったときなど、その一つ一つの取引について課税区分を入力する必要があります。
例えば、普段支払っている費用は大体10%、お客さんに渡すお菓子は軽減税率の8%、といった風に取引ごとに入力します。
(経理担当者の方は馴染みがあるのでは?)

簡易課税では、そういった作業が必要ない、ということ。
簡易課税では、売上の業種区分さえ入力されていれば、控除仕入税額を計算できるのです。

還付は発生しない

原則課税では、期中に支払った消費税額が消費者から預かった消費税額を超える場合には、還付が発生することとなります。

しかし、簡易課税制度では、実際の支払った消費税額は全く考慮せず、控除仕入税額を計算しますので、多額な設備投資を行った場合などでも還付されることはありません。
原則課税と簡易課税、どちらが節税になるかについては、下記をご参考にしてください。

簡易課税制度が節税になる場合は

実際に支払っている消費税額が少ない場合に、簡易課税制度が節税になります。

上記の不動産会社には事務所の賃貸収入が毎月入ります。
しかし、事務所も新しく、ほとんど修繕費なども支出しませんでした。
そういった場合でも、簡易課税制度を適用していれば、売上に係る消費税額の40%として計算した、仕入控除税額が、控除されることとなります。

原則課税のほうが良い場合は?

実際に支払っている消費税額が多い場合には原則課税のほうが有利となります。

上記のように、多額の消費税を支払う場合には、実際に支払う消費税額のほうが多いので、原則課税のほうが有利となります。

なので、簡易課税制度の適用を受けるか検討する場合には、2年分の売上予測と設備投資などの計画をしっかり作成することが望ましいです。
その計画に基づいてどちらが有利か検討することで、うまく節税することができるでしょう。

簡易課税制度を選択する際の注意点

大幅な節税も期待できる簡易課税制度ですが、適用する際には注意点もあります。

①原則課税のほうが有利になる場合もある
②前もって届出をしなければ適用できない
③2年間強制適用期間がある

原則課税のほうが有利になる場合もある

上記で解説したとおり、原則課税のほうが有利となる場合は当然あります。
その上で、下記②③のような届け出の注意点もあります。

前もって届出をしなければ適用できない

簡易課税制度を適用したい場合には、届け出を前もって提出する必要があります
(設立や一定の災害時などを除く)
そのため、新たな事業年度が開始した後に、「今期は簡易課税のほうが節税になりそうだから簡易課税にしよう」という風に後から適用を受けるということはできません
逆に、簡易課税から原則課税に戻す場合についても同様です。

2年間強制適用期間がある

簡易課税制度の適用を受ける場合には、2年間の強制適用期間があります
そのため、「今期に簡易課税を適用したけど、翌期は原則課税に戻そう」ということはできません(一定の災害時などを除く)。

ここに記載されていることは基本的な事項であり、実際に簡易課税制度を適用する場合は、顧問税理士などの専門家に相談することが望ましいです。
上記にも記載した通り、簡易課税制度の届出の期限は事業年度の開始前までなので、期限が過ぎてしまい適用を受けることできなかったり、原則課税が有利なのに簡易課税制度を適用してしまったりと、結果的に多額の税金を支払う事態になる可能性がありますので、選択の際には非常に注意が必要です。

しかし、制度を正確に理解していれば納税者の味方となってくれる制度です!

まとめ

簡易課税制度は、その適用によって、大きく節税効果が見込める場合もあります。

そのため、年商が5千万円に行かない・又は超えたり超えなかったりするという事業者は、要チェック。
消費税の節税のため、必ず知っておきましょう!