
選択する科目の多い税理士試験。
そして、なかなか一度の受験で、合格を勝ち取れないことが多いです。
試験日である8月から、合格発表の12月までの間に、同じ科目をもう一度受ける気持ちはすっかりなくなってしまったりします。
同じ科目を何度も受け続けることは、モチベーションが減退することも事実。
さて、結局同じ税法は何度も挑戦すべき?それとも新たな税法に挑戦すべき?
早期合格か、実務で役立つ知識か
同じ税法を何度も受験すべきかどうかは、早期合格を目指すのか、実務で役立つ知識を付けるのかことを優先するか、といった方向性によっても変わってきます。
そして、早期合格を目指すならば、退屈ではありますが、同じ税法を何度も受験すべき、と言えるでしょう。
早期合格や、自分のつけたい知識を効率的に得るためには、受験計画をしっかりと立てること。
自分の気分やその場のモチベーションだけで受験する科目を決めてしまうと、合格まで余計に時間がかかってしまいます。
そして、ある程度同じ科目を受け続けることは、受験戦略として有用、ということについて説明します。
なぜ他の税法を受けてしまうのか
早期合格を目指す場合、同じ税法を受け続けるほうが良いです。
その理由を紹介する前に、「なぜ他の税法を受けてしまうのか」ということついて見てみましょう。
税理士試験のスケジュールの問題
税理士試験は8月の本試験から12月の合格発表まで、4ヶ月という長い期間があります。
そしてその期間は、「合格か、不合格か」ということが確定していません。
その状態で一度受けた税法をもう一度予備校などに申し込めば、その4ヶ月の勉強期間と受講料を無駄にしてしまうかもしれません。
(合格している可能性もあるためです。)
それはとても勇気のある決断。
(なお、「1年挟んでもう一度受験する」のであれば、話は別です。)
その他の心理的な理由
上記は2年連続で同じ税法を受けにくい主な理由ですが、そのほかにも「同じ税法を受けたくない」と感じる心理的な要素もあります。
①新しい刺激が欲しくなる
税法の勉強は条文の暗記など単調なものが多いです。
(特にミニ税法の場合は、範囲も狭く、高い精度が求められるため、何度も同じ文章を見続けることに。)
そのため、「もうこの税法の条文は見たくない」という気持ちにまでなってしまいます。
②一歩でも前に進みたい、という焦り
同じような条文を何度も見続けていても、前に進んでいる感触が全くつかめません。
そのため、一歩でも前進したい、という焦りが生ます。
③他の科目のほうが自分に向いているのでは?という迷い
模試などで成果が得られなかったり、面白味が全然感じられないと、「この税法は自分に向いていないのでは?」という迷いが出てきます。
こうした理由から、「別の税法」ではなく、USCPA(米国公認会計士)の勉強を開始した友人がいました。
結局半年後には次の税法を勉強する方向に戻りましたが、余計な投資と勉強時間のロスが生じてしまう結果となっていました。
早期合格したいなら同じ税法を受けるべき理由
同じ税法を何度も受験することは、非常に根気のいること。
しかし、「早期合格」の観点から言えば、「うさぎとカメ」の話ではありませんが、同じ税法を何度も受験し、地道に一歩ずつ進むのが一番近道です。
理由は下記の通り。
①そもそも一度の受験では合格を得にくい
税法は、「合格できるレベル」であったとしても、一度の受験で合格する、ということはなかなか難しいです。
広い出題範囲の中で実際に出題される理論はほんの一部分ですし、ちょっとしたミスも合否に大きく影響します。
特に所得・法人は、そもそも1年本気で勉強をしても、試験範囲を網羅することは難しいです。
そのため、1度の受験で合格する、ということがそもそも難しいのです。
②勉強する範囲が少なくて済む
新たな税法を受験するよりも、同じ税法を2回受験したほうが、勉強する範囲は少なくて済みます。
そのため、総勉強量で言っても、少ない時間で合格することができるでしょう。
仕事が忙しくて勉強時間が取れないような場合であっても、勉強時間を確保しやすいです。
また、場合によっては2科目同時受験という方法も採ることができるでしょう。
③経験者は初学者よりも有利
基本的に2年目以降の経験者のほうが、初学者よりも勉強期間が長く有利です。
それはミニ税法であっても、基本的には同じことが言えます。
ミニ税法は「1年で試験範囲が網羅でき、改正もあるため、初学者と条件に差がつきにくい」とも言われますが、理論暗記についてはやればやるほどスラスラ出てくるようになるもの。
そのため、やはり経験者のほうが初学者よりも有利になると言えます。
合格する確率は他の税法に乗りかえるよりも高くなります。
同じ税法を何度も受験するデメリット
同じ税法を何度も受験することは、早期合格を目指す上では必要なことですが、下記のようなデメリットもあります。
①知識の幅が広がらない
試験勉強の良い点は、実務でも役立つ知識を得ることができること。
しかし、同じ税法を何度も受験しても、知識の幅は広がりません。
その点はデメリットと言えます。
とは言え、2回以上受験することで、知識はより深まります。
そのため、むしろ一度で合格してしまうよりも、2回受けたくらいのほうが知識が定着して良いと思います。
(さすがに4回目以降となってくると、相当勉強する意味も薄くなってしまいますが…)
「特に実務に役立つ科目」は、法人・消費・所得・相続。
どういった税理士法人を目指しているかによっても必要な税法は異なりますが、自分が将来使うであろう税法については、試験勉強を通して学んでおくと、将来確実に役立ちます。
②モチベーションが上がりにくい
2回目の受験はあまりモチベーションが上がりません。
しかし、直前になってくれば、合格の可能性も高いこともあり、ちゃんとやる気になるでしょう。
どんなことでも、「挑戦しなければ分からない」、という面もあります。
「〇〇に挑戦したい!」という気持ちが強くあるのであれば、その気持ちを我慢してまで、同じ科目を受け続けるのもなんだかもったいないと感じますよね?
自分の気持ちは、モチベーションと強く連動してきますので、その点は考慮しましょう。
③実際に自分に向いていない場合もある
「受けている税法が不得意だ」
「この税法は面白味を感じない」
「自分には向いていない」
「模試で全く成果がでない」
そのような場合に、もう一度受けても、本当にその税法が自分に合っていない、という可能性もあります。
法人税法を何年も受験して受からず、所得税法を受験したらすぐに受かった、といった方もいます。
「ただ惰性的に同じ税法を受ける」ことは避け、しっかりと客観的な判断をした上、「戦略的に他の税法を受ける」ことも常に視野に入れておきましょう。
私の体験談
私の受験歴は下記の通り。
1年目 ○簿記論・☓財務諸表論
2年目 ○財務諸表論・☓消費税法
3年目 ☓消費税法
4年目 ○法人税法
5年目 ☓所得税法
6年目 ☓消費税法・☓国税徴収法
7年目 ○消費税法・○国税徴収法
①所得税法の受験による長期化
「早期合格」だけの観点から見ると、5年目に所得税法を受験したことは失敗。
法人税法合格後、すぐにまた消費税法の受験に戻れば、もう一年早く5科目合格となる可能性は高まったでしょう。
(5年目から消費税法・国税徴収法の同時受験を開始可能でした。)
しかし、実務でも所得税法の知識は生きており、総合的には所得税法の選択は失敗だったとは思っていません。
②消費税法と国税徴収法への再受験
最後の2年間は、他の税法を受けたい気持ちを抑え、早期合格のために「あとはひたすらこの2科目を受け続けよう」という結論になりました。
消費税法は、2回目の受験の時点で模試で良い結果を残すことができていましてので、「何度か受験をすれば確実に受かる」という確信はありました。
その結果、7年目に消費税法と国税徴収法の同時合格。
正直、税理士試験を受け続ける気力も失いつつあったので、その年に合格できたことで相当気が楽になりました。
私は結局、相続税法を受験せずに終わってしまいました。
そのため、相続税の知識は0。
そういった点で、実務で苦労している面もあります。
私の場合は早く合格したいという気持ちが強かったため、上記のようになりましたが、早期合格だけが良い訳ではありませんので、その点も考慮して受験戦略を練りましょう。
まとめ
基本的には、いろいろな科目を受験するよりも、同じ科目を何度も受験するほうが、早期合格には有利と言えるでしょう。
淡々と同じような勉強を繰り返すことは根気のいること。
その「根気」ことが、税理士試験を早期合格するために重要な力なのです。